偽装婚約~秘密の契約~
『もうすぐ空港に着きますが、
絶対に私から離れないでください。
そして荷物から目を離すことのないように気をつけてください。
アメリカという国は物騒ですので。』
「……はい」
流れゆく景色を眺めながら曖昧に返事をした。
だってさ、せっかくアメリカに来たんだよ?
なのに滞在時間5時間くらいとか…ありえないでしょ?
しかもキモチはブルーだし。
「あの…瑞季さん?」
『なんでしょうか』
「あの、空港に着いてから飛行機に乗るまでに時間って…ありますか?」
瑞季さんはうーん…と考えながら
『あまり長くはないですが多少はあります。
何か食べたいんですか?』
ビックリしてルームミラーを見ると瑞季さんはニヤッと笑っていた。
さすが瑞季さん。
あたしが考えてることまで分かっちゃうなんて。
でも、後にあたしはこの選択が間違いだと気づかされる。
もし、あのとき。
ご飯を食べようと思わなければ、
こんなことに…ならなかったのに。