偽装婚約~秘密の契約~




「どう…して…」


あたしは自分の耳を、目を、疑った。



「み…瑞季さん。

搭乗口…搭乗口に行きましょう」


人の波をかき分け、必死でこちらに来ようとしているアイツの姿を見て呆然としている瑞季さん。

そんな瑞季さんの手を取って搭乗口がどこかも分からず、走った。



きっと…これは悪い夢だ。

そう、悪い夢。


だから…お願い。

こんな夢から…早く、醒まさせて。




『………待てよっ!沙羅!!!』


ガヤガヤとうるさかった待合室がいっきに、静かになった。

何事かと、みんなが目を輝かせている。


あたしはアイツの声に動じず、まだ足を動かす。


でも


『沙羅様』

瑞季さんがあたしを強い力で引いた。


その力には逆らえず、あたしは走ることができなくなった。



「行きましょうよ、瑞季さん。

じゃないと…そうじゃないと…日本に、帰れなくなっちゃうから」


心臓が今までにないくらい、ドキドキしていた。

それは走ったせいなのか、

突然現れた…晴弥のせいのかは分からない。









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