偽装婚約~秘密の契約~
「もう…いいじゃない。
そろそろ飛行機、出ちゃうの。
だからあたしを離して。
それで、忘れ物、渡して。」
晴弥に抵抗することをやめて、冷静にそう言った。
『そうか。
でもさ、沙羅。
その飛行機、乗らなくてもいいんだよ』
「どうして?
あたし、日本に帰るんだよ?今から」
『だから、その必要がないって言ってんだよ。
お前は瑞季と一緒に日本に帰らなくていい。』
晴弥…何、言ってんの?
じゃあどうやって日本に帰れ、って言うの?
『さっきさ…忘れ物した、って言ったろ?
あれ…沙羅の忘れ物じゃないんだ。
俺が…大事なもん、忘れてた…』
「何言ってー…『沙羅』
晴弥はあたしからゆっくり離れるとあたしの目を見てこう言った。
『俺…大事なもの…忘れてた。
それでその大事な物が大事だ、ってことに気づかずに手放すところだった…
沙羅…俺…お前が
スキ、なんだ――――…………』