偽装婚約~秘密の契約~
頭の中が真っ白になった。
そしてさっきまで見えていた人たちの顔は見えなくなって。
あたしの視界には晴弥しかいなかった。
『偽装婚約の相手が…正式な婚約者になる、っていうのは…ありえない?』
そしてあんなに騒がしかった周りの音も聞こえなくなって。
晴弥の声しか聞こえなかった。
あたしは堪えていた涙を堪えきれなくなって涙腺崩壊。
そして涙で言葉につまりながら言う。
「………あえない…ワケ…ないけど…」
そんなあたしの言葉を聞いて晴弥は満足そうに笑う。
『今の、返事、OKってことで受け取るから。
沙羅、お前が知ってるように俺、しつこいから。
もしまた俺がイヤになっても、今度は絶対離さねぇーからな』
顔を手で覆いあたしは何度も首を縦に振った。
『ってかそもそも沙羅に最初から拒否権はないんだけどな』
晴弥がニヤッと笑っている姿が容易に想像できた。
まだまだいろんな乗り越えなくちゃいけない壁があると思う。
あずさのことだってあたしの中じゃ解決したワケじゃない。
でも…なんだか全部、なんとかなりそうな気がする。
それはきっと…晴弥が隣にいるから。