偽装婚約~秘密の契約~
『おい』
突然、晴弥が振り向きあたしの腕を掴む。
「ちょ…何よ!?」
余計注目集まってるから!
振りほどこうとするけど、当たり前に男の晴弥の力に勝てるワケがない。
『あんまキョロキョロすんな。
お前は堂々としてればいいんだから』
しばらく行くと晴弥はそう言って掴んでいた手を離した。
え…?
なんで?
なんで後ろにいるあたしがキョロキョロしてること…分かったの?
晴弥はまた無言で歩き出した。
今度は俯きながら後ろをついていく。
ホント、分かんない。
晴弥ってヤツが。
意地悪だし、
口数は少ないし、
変態だし、
強引だし。
いいとこなんて今のところ1つも見つかってないけど。
だけど、なんだかコイツを心から憎めないあたしがいる。
なんなんだろう。
このキモチは。