偽装婚約~秘密の契約~
「よろしくね、鬼灯(ホオヅキ)さん」
そう言ってあたしに笑いかけるのは担任の先生の森乃(モリノ)先生。
晴弥に連れて来られたのは職員室だ。
敷地が広いだけに職員室の広さも尋常じゃない。
「…よろしくお願いします」
とりあえず頭を下げておく。
「ありがとね、遊馬くん。
もうすぐチャイム鳴るから教室行ってていいわよ」
そう言われた晴弥は黙って職員室を出て行く。
「じゃ、行きましょうか。」
森乃先生の後ろについて階段を昇ったり角を曲がったり…
ヤバイ。
もう分かんないや。
今自分がどこにいるのか。
あたしは…無事に帰れるんだろうか。
そんなことを考えていると森乃先生が立ち止まる。
「教室、ここね」
『2-B』
と書かれた札のかかった教室の前に着く。
「私がどうぞ、って言ったら入って来て。
それまでここで待機ね?」
森乃先生はニコッと笑って教室に入っていった。
なんて可愛らしい先生なんだろう。
あたしとは全然違うや。