偽装婚約~秘密の契約~
『もし、沙羅様が次期社長と偽装婚約なさらなければ、沙羅様一家は…心中するしかないのです。』
「はっ?!何言ってんの…??」
なんであたしが婚約しないと死ぬことになるのよ!
『沙羅様が結婚なさるのと交換条件として、遊馬家がご両親の借金を返済する、ということになったのです。』
「でもなんで…」
『さっきも言ったでしょう』
森本のおっさんの顔が変わる。
『借金は2億ほどある、と。
その2億は…いわゆる、闇金から借りたお金なのです。
どういうことか…お分かりになりますよね?』
………そうだったんだ。
ここまで聞けば、おバカのあたしにでも分かる。
あたしたち一家は、もしこの話を逃せば一生陰に隠れて怯えながら生きて行かなくてはならない、ということだ。
「でも…なんであたしなんですか?!
遊馬家の次期社長とか知らないですし、お母さんは?!お父さんは?!ホントに、承諾したんですか?!」
急に敬語になったのは…なんでだろう。
『喜んでお受けします、ということでした。』
………っておいっ!!
お母さん!お父さん!
大事な娘を知らないところに出しちゃっていいワケ!?
え?何?
自分で大事な娘、とか言うなって?
ま、そこは気にしないでもらいたい。