偽装婚約~秘密の契約~
「でも、でも、あたしが小学生のとき、ジュウゴはそんなにお金持ちじゃなかったんですよ?!」
アイツの家は、ごく一般的な家で。
お金持ちでは…なかったはずだ。
『サクラ商事は…最初は傾いた経営で、倒産しかけました。
ですが、ジュウゴ様が小学校6年生になるときには完全に持ち直したのです。
それからサクラ商事は成長を続け、いつしか日本でトップ10にまで上り詰めたのです』
知らなかった…そんなこと。
「もう1つ、聞いてもいいですか?」
『なんなりと』
紅茶を一口飲み、あたしは言った。
「晴弥とジュウゴはいつから仲が良かったんですか?」
『お二人が出会ったのは中学生の頃です。
その頃から遊馬電器はかなり大きな会社で、皆様、晴弥様の顔色を伺うように接していたのです。
晴弥様はそんな皆様の態度が気に入らなかったようです。
そこへ、ジュウゴ様が現れました。
ジュウゴ様は沙羅様がご存じのようにとても明るく、誰にも愛される方です。
そんなジュウゴ様は晴弥様を特別扱いすることもなく、誰にでも平等に接しました。
それが晴弥様は嬉しかったようで、いつしかお二人はつねに一緒に行動するようになったのです』
そんなことが…あったんだ…
ジュウゴと別れて4年。
その4年間でいろんなことがあったんだな、ジュウゴにも。