偽装婚約~秘密の契約~
「最後に…もう1つ、いいですか?」
瑞季さんは頷く。
「どうして晴弥は…偽装婚約の相手にあたしを選んだんですか?」
本音を言えば、これが1番聞きたかった。
森本は結局、教えてくれなかったし、晴弥は聞いても教えてくれないだろうし。
瑞季さんなら、教えてくれるかもしれない。
そう思ったんだ。
『沙羅様…残念ながら、それだけはお教えすることができません』
瑞季さんは真っ直ぐ、あたしを見つめる。
『ただ1つ、言えることがあります。
それは、晴弥様は沙羅様をみ…『瑞季』
瑞季さんの言葉を遮る鋭い声。
声が聞こえた方を見ると晴弥が無表情で立っていた。
その横にはジュウゴもいる。
『余計なことは言うな』
『申し訳ございません』
瑞季さんは頭を下げる。
瑞季さん…なんて言おうとしたんだろう。
晴弥はあたしを…なんだったんだろう。
『おい、沙羅。
ところでお前…洋介と、別れたんだろうな?』