偽装婚約~秘密の契約~
『沙羅。
いつ別れるつもりだ?』
「あたしは…あたしは洋介と別れるつもりはこれっぽっちもないから」
そう叫び、自分の部屋に逃げ込む。
分かってる。
これは逃げていい問題じゃない。
頑張るって決めたのに。
お母さん、お父さんのために頑張るって決めたのに。
なのに…涙が止まらない。
洋介とは…別れたくないんだ。
つい昨日知り合ったアイツに、洋介のことまで口だしされたくなかった。
『………さーら』
ドアのほうから聞きたくない声が聞こえてきて。
慌てて涙を拭う。
『あんまり晴弥のこと、恨むなよ』
「あんたに何が分かんのよ?!」
あたしのキモチなんて分かんない。
それに、今はジュウゴとは話したくない。
どうせ、晴弥の肩を持つに決まってるんだから。