偽装婚約~秘密の契約~




何度も、

何度も、

何度も、


洋介に電話をかけた。


でも、聞こえて来るのは


『現在使われておりません』

という機械音だけ。


着信拒否にでもされたのだろうか。


パニックなあたしと、冷静なあたし。

2人が存在していた。


そのせいで、涙が溢れない。


もしかしたら、受け入れられていないだけかもしれない。


メールを送る。


「どうして別れなきゃいけないの?

理由だけ教えて」


それから5分後。

予想外の返信。


返信が来ないと思って送ったメールだったのに。



『もう電話もメールもしてくるな』


でも、内容はあたしの質問の答えではなかった。



どうして。


どうして。


どうして?


どうして、こんなことになったの…


ワケの分からない出来事に頭を抱える。

そして、気づいた。



アイツだ…

晴弥だ。


アイツが何かしたんだ、きっと。




あたしは携帯をベットの上に放ると部屋を飛び出した。







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