偽装婚約~秘密の契約~
「………晴弥っ!」
リビングのソファに座っている晴弥に掴みかかる。
でも、微動だもしない晴弥。
あたかも、こうなることが分かっていたような態度。
そんな晴弥の姿が霞み始めた。
こんなヤツに泣き顔を見せるのは屈辱だ。
でも、そんなことに構ってられない。
コイツのせいで。
この、イカれた晴弥のせいで。
頭にはそのことしかなかった。
『沙羅、どけ』
静かに放たれる、言葉。
「イヤよ!
あんた、いったい洋介に何をしたの!?
ねぇ!何をしたの!?」
晴弥は何も言わず、ただ見下したような目であたしを見ている。
なんなんだ、コイツは。
自分中心に世界が回っているとでも思っているのだろうか。
「答えなさいよ!
なんで黙ってるの!?
晴弥っ!!」
晴弥はあたしから視線を逸らさぬまま、言う。
『瑞季。コイツを部屋に連れて行け』