偽装婚約~秘密の契約~
「お願い!瑞季さん!
晴弥と話をさせて!」
いくらせがんでも、瑞季さんはドアの前をどいてはくれない。
静かにあたしを見下ろしている。
『沙羅様。落ち着いてください』
落ち着け?
そんなの無理に決まってるじゃない。
「瑞季さんっ!お願いしますっ!」
暴れ続けるあたし。
そんなあたしは突然、瑞季さんの香りに包まれた。
「…みず…き…さん?」
驚きすぎて今、どいう状況なのかもよく分からない。
『沙羅様。
私の話を聞いていただけますか?』
瑞季さんの腕の中は心地よく、心臓のトクトクという音があたしを落ち着かせた。
相変わらず、頭の中は混乱したままだけど。
『晴弥様は確かに、洋介さんに接触しました。
そして、沙羅様と別れるように促しました。
沙羅様は、おかしいとおっしゃるかもしれませんが、
晴弥様はあなたのために、洋介さんに頭を下げたのです』
晴弥が…頭を下げた?
あたしのために…?
洋介と別れることが、あたしのためだと言うの…?
いったい…どいうこと…?
全然、話が見えてこない。