偽装婚約~秘密の契約~
『とりあえず、私の後ろについて来て下さい。
晴弥様がお待ちです。』
いつの間にか車は車庫に入っていた。
あたしは車を降り、言われた通り森本について行く。
まずは玄関。
うちのリビングほどの広さ。
ここが玄関…ですか?
『靴は脱いでいただいてスリッパに履き替えてください』
森本はスリッパを出す。
ここ…すごい和なんだけど…
なんかめちゃくちゃ日本、って感じだ。
床はフローリングじゃない。
途中、お手伝いさんらしき人とすれ違う。
そのお手伝いさんは和服を着ている。
ここは…老舗旅館かなんかか…?
廊下の途中途中にある窓の外は庭園だった。
松ノ木に一面に石が敷き詰めてあり、池がある。
まさに旅館だ。
「ここって…ホントに遊馬家の家なんですか?」
前を歩く森本に聞く。
『現社長がこういう造りが大好きなのです』
森本はそう言って一瞬、外へ視線をやる。
なるほど。
晴弥ってヤツのお父さんは和が大好きなんだ。