偽装婚約~秘密の契約~
『逃げるなよ、沙羅。
朝から熱いのもアリじゃね?』
アリじゃねぇー!
と、大声で叫びたかったがなんとか堪える。
「は、晴弥?
落ち着こう。
とりあえず、朝だよ?今。
モーニング。
Are you OK?」
瑞季さんにたたき込まれた完璧な発音で聞く。
『I am all right.』
私は大丈夫です。
なんて完璧な英語で返されても…ねぇ?
実際、大丈夫じゃないし。
晴弥が1歩、1歩とあたしに近づいて来る。
そしてあたしは1歩、1歩後ろに下がる。
でもまあ、ありきたりな展開で、後ろは壁。
前は晴弥。
腕は掴まれてるせいで逃げられるワケもない。
『そんな、怯えるなよ。
昨日はあんな嬉しそうにしてたくせにさ。』
う、嬉しそうになんてしてないっ!
あ…あのキスは…雰囲気に流された…って言うか。
焦るあたし。
近づいて来る晴弥の顔。
キ、キレイな顔…してる。
ピンチなはずなのにそんなことを冷静に思ってるあたし。
そしてあと5㎝のところで、1つ咳払いが聞こえて、
『お邪魔して申し訳ございません。
ですが、お時間の方がもう…』
なんて天の声…じゃなく、瑞季さんの声がして。
瑞季さんっ!
さすがですっ!
助けてくれてありがとうございます!!