偽装婚約~秘密の契約~
『瑞季。
お前は空気も読めないのか』
ちぇっ、なんて舌打ちのあと、晴弥は仕方なさそうにあたしから離れる。
『申し訳ございません。
ですが、もう8時…ですので。』
「は…8時ぃぃ?!」
あたしは晴弥と瑞季さんを部屋から追い出して、ハイスピードで準備をする。
にしても、昨日のあたしはおかしかった。
晴弥とキスなんてするつもり、なかったのに。
我に返ったときにはもう、自分のベットの上で。
なんだろう。
アイツのキスに、脳がやられちゃった…気がする。
洋介の裏切りを知って。
晴弥の優しさを知って。
動揺してたのかな?
昨日のあたしは。
ちょっとだけ、感覚がおかしくなってたんだよね?きっと。
うん、そうだ。
そうに決まってる。
ちょうど、自分を納得させたところで準備完了。
よし、今日も1日…頑張りますか。
静かで穏やかな日々を取り戻すために。