偽装婚約~秘密の契約~
『すみません。
1つだけ…聞いてもよろしいでしょうか?』
テーブルマナーの復習中。
瑞季さんが申し訳なさげにあたしを見る。
「なんですか?」
『先ほど…晴弥様は沙羅様になんとおっしゃったのでしょうか?』
その言葉でさっきのことを思い出し、また真っ赤になるあたし。
ダメだ。
アレはきっと、ヘンな意味じゃないのに。
なのにあの囁きを思い出すとなぜか心臓が暴れ出す。
「いいいいいやぁ…
なんだった…かなぁ…」
動揺しすぎて最初の方がヤバかった。
『…あ、はい。すみません。
失礼なことをお聞きして。』
「あ、いや!全然いいんですけど…」
とりあえず、あんなこと、あたしの口から言えない。
あ…いや、別にヘンな意味じゃないんだとは思うけど。
けど…どうしても言えない。
『もし、うまく騙せたらいいこと…しような?』
なんて。