オオカミいっぴき。~クールな不良と甘々❤ラブ!~
まだあたしが藤岡くんを知らなかったころ。
そのとき、あたしは屋上に続く階段で先輩に告白されてて。
「あのさぁ、好きなんだよね。つきあってくれない?」
その人、話したこともないし、なんだかなれなれしいし。
とりあえずごめんなさいって言ったけどしつこくて。
「いーじゃん、ちょっとだけでもさぁ。ね?」
そんなこと言いながら絡むから、あたしが「嫌です!!」って叫んだら、藤岡くんが屋上の扉から出てきた。
あたしたちを見て面倒そうに顔をしかめると、
あたしの手首からその人の手を離して、胸ぐら掴みあげて、
「うぜぇからあっちでやれよ」
そのド低い声色になぜか胸が高鳴った。
先輩はさっさと逃げてっちゃうし。
ぼーっとしてたら、藤岡くんは行っちゃうし。
「あ、ありがとうっ!!」
だけど、その広い背中にお礼を言ったら、立ち止まってこっちをむいて、
「……別にオマエのためじゃねぇよバカが」
って睨まれました。
でも、そのとき藤岡くんの耳がちょっと赤かったのをあたしは知ってる。
――そんな不器用で優しい彼に、あたしは恋をしたんです。