蝉時雨【短編】
つれてこられるがままやってきたのは、水泳部が帰った後のプール。
「さ、入ろうぜ」
「入ろうったって、あたし水着とかないし」
「俺もないよ」
「じゃあ、どうすんの」
聞くが早いか、彼は制服のままプールへ飛び込んだ。
高く水しぶきが上がり、頭の上からまともに水をかぶる。
「もう濡れちまったら一緒だろ」
水から顔を出して笑う。
「……おぬしもなかなか悪よのぅ」
日光であたためられたプールはほどよく冷たかった。