スタンド・アローン
 神逆と名乗った生徒は刺すような視線で俺を見る。

「北辰から転校してきた中嶋です」

 俺は自転車のスタンドを立て、ガクランの内ポケットから出した生徒手帳を見せる。

「駐輪場はどこかな。そうだ、駐輪許可証もいるのかな」

「いえ、駐輪場の使用は自由です。向こうの角です」

 冗談のつもりだったんだが、神逆は至極真面目に応じる。

 しかし、初めと比べて目線に険がなくなった気がする。堅い性格なんだろうな。

「詰め襟はきちんと前を閉じないと、みっともなく見えますよ」

 言いながら、神逆は腕時計を指して見せる。

「急いだほうがいいですよ。予鈴まであまり時間はありません」

「おっと、そりゃまずいな」

 慌てて自転車に乗ろうとすると、背後から声がする。

「あれ、ルイ、その人だれ?」
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