スタンド・アローン
「なんやおのれ、まだ生きとったんかい」

 礼より先に、悪態が出てしまう。

 こいつとはよく喧嘩したもんだ。

 理由はまあ、些細なことだったんだが。

「私はただ、近隣の進学先に海淵をえらんだだけのこと。貴様にとやかく言われる筋合いはない」

 レオは平然と、俺の顔も見ずに言う。

 別に仲が悪いわけじゃないんだが、和やかな会話などした覚えはない。

 初めのうちは馬があわないんで本気でケンカしたんだが、そのうち挨拶がわりになっていった。

「そう言うたら、確か他にも男がおるとは聞いたが、まさかよりによってなあ…」

 懐かしいやら照れくさいやらで、俺は頭を掻きながら呟く。

「それは私の台詞だ。大昔の腐れ縁が、今更蒸し返されるとはな」

 呆れたような顔で笑いながら、レオはどことなく嬉しそうだ。

「しかしいいのか、津也よ」

 不意に、レオが真顔で言う。

「何がや」

「もう授業が始まるぞ」

 おお、忘れて…

「自分が何やっとるんやおのれはあっ」
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