スタンド・アローン
 午後の授業もまた騒々しいかと思うと、俺は気が重かった。

 美術。

 好きな科目なんだが。

「今日は人物画のデッサンです。二人一組でお互い相手を描いてみましょう」

 如月と名乗った品のいい先生が言う。

 相手ったってなあ…。

 なんせ、周りは女子ばかりだ。

 まあ、誰か余るまで待つのか無難かな。

 そう思っていたら、二人ほどこっちに来る。

 神逆と、誰だ?

「あ、あの…」

 小柄な神逆よりさらに背の低いポニーテール。

 おずおずと俺を見ている。

「ん?」

「あ、あの…」

 声が上擦ってる。

 怯えてるようでもないし、どうやら赤面症か。

「あの…えと…」

 これじゃ話が進まん。

「そこ座って」

 俺は近くの空いた椅子を指す。

「名前は?」

 スケッチブックに鉛筆を走らせながら尋ねる。

「あ…」

 少しばかり落胆したような表情。

「どうした?」

「あ、いえ」

 何事もなかったように座る。

「シオン・ハルトマンと申します」

 軽く、ぺこりと頭を下げる。

 どこかで聞いたような名前だが…。
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