スタンド・アローン
「思い出しましたか?」

 姿勢を崩さないまま、シオンが言う。

「まさか、あの時の捨て台詞を真に受けて追って来たって言うのか」

 気を取り直して、俺は鉛筆を構える。

 シオン・ハルトマン。

 春の雷台祭の時、会場で鉢合わせした留学生。

 確か、陵明女学院だったと思う。

 学生新聞か何かの取材で観戦に来ていた何人かの内の一人だ。

 お嬢様学校の陵明が、なんだって格闘技の試合を見に来たのか。

 妙だとは思った。

 後で聞いた話だと、シオンたっての希望で実現したらしい。

 数年前に衛星放送で試合を見てから俺に興味を持っていて、生で観戦したくて来日したという。

 と、言うより。

 シオンの関心は、俺にあったようだ。
< 36 / 44 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop