スタンド・アローン
 どこかの新聞部から取材を受けることは了解していたが、まさか一人で控室に乗り込んで来るとは思わなかった。

 しかも、取材と言いながら、その内容はおよそ学生新聞の記事に載せるようなものじゃない。

 まして、陵明はお嬢様学校だ。

 相手を打ち抜く瞬間に何を感じるのか、なんて聞かれるとは予想の外も外だ。

 光を砕くような感触、と答えたけど。

『私にも、それを感じることはできますか?』

 そう聞かれた時には、気まぐれだと思った。

 だから、何の気なしに答えた。

『俺に勝てるくらい強くなれば、その先にも辿り着けるかもしれない』

 深い意味はなかった。

 ただ、普通のお嬢様なら、そう言えば怖じ気づいて逃げると思った。

 ところが、シオンはそうじゃなかった。

 満足気な面持ちで、悠々と引き上げて行った。

 その時俺は知らなかった。

 シオンは、地元ドイツの学生大会で優勝経験を持つレスラーだということを。
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