スタンド・アローン
「それで、わざわざ喧嘩売りに来たってのか」

 筆を止め、画用紙を傾けてみる。

「む…、よし」

 いい仕上がりだ。

「どうかな」

 描き上げた下絵を見せると、シオンは照れたように笑う。

「私、こんなに美人に見えますか?」

「見たまま、描いただけだよ」

 美化したつもりは、ないんだが。

「口説き文句みたいに聞こえます…」

 ひとしきり照れた後、シオンはスケッチブックを手に取る。

 何気なく椅子に腰掛けると、注文をつけられた。

「脚を組んで、頬杖をついてみてください」

 言われた通り、脚を組んで膝の上に肘をつく。

「これでいいか」

「ええ」

 満足げに頷くと、シオンはこちらを向いたままデッサンにかかる。

 しばらくの間、シオンは無言で鉛筆を走らせる。

 俺も、言葉をかけることもなくただ座っている。
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