労働の価値 その2
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おかねをみても、
それが もとは なんだったのか、
わからない。

だから、
それが商品だろうと、
なかろうと、
なんでも、
おかねに変わってしまう。

すべてが、
売ることのできるもの、
買うことのできるものに、
なってしまう。

商品の流れは、
溶鉱炉になる。

そのすごい熱で、
なんでも溶(と)かしこんでいく、
溶鉱炉に。

ひとびとのなかにおかれた、
溶鉱炉になる。

なんでもが、
このなかに投げ入れられる。

そして、
まざりけのない、
おかねの鋼(はがね)、
「純金の固まり」となって、
出てくるのだ。

この錬金術、
つぎつぎに金を生み出していく魔法には、
聖剣ですら、
逆らえない。

だから、
もっとずっとおとなしい、
商売のそとにおかれていた、
修道院の聖水など、
その「効き目」など、
問題にならないのも、
当然だ。

   ダカラ聖水ハ タダノ売リ物トナッテ オカネニ サレタ…

おかねでみたとき、
それぞれの商品の違いは、
なくなってしまう。

そんなふうに、
おかねは、
なんでもかんでも、
めちゃくちゃに、
同じにしていってしまう。

老いも若いも美も醜も、
消えてしまう。

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