先生がくれたもの~運命に導かれて~
オレは同じく静かに考えた。
先輩の電話から電話を貰うまで、オレは成功する事しか考えてなかった。
手術は必ず成功に終わる。
心の奥底ではそう信じきっていた。
だけど…
忘れていた。
“失敗”という二文字。
その可能性は十分にある。
むしろこちらの可能性の方が遥かに高い。
オレの額に冷たい汗が流れた。
失敗したらオレは、全てを失う。
今までの功績やオレの将来は勿論、
瑠璃の笑顔も温もりも…全て自分の手で壊してしまうという事になる。
オレは自分が愚かだと思った。
さっき尾崎先輩の前ではああも言ってみたものの、今の自分は恐ろしさに震えを止める事は出来ない。
瑠璃の笑顔が脳裏に浮かぶ。
オレには眩しすぎる暖かな光。
それを失ったらオレには闇しか残らない。
絶望という名の、暗く深い、それでいて残酷な海。
オレはその海底に身を投げる事になるのだ。
オレは隣にあった椅子を蹴った。
ガーンという音が虚しく響き渡った。