リビング
自分が傷つくのを恐れて、彼らは見てみぬフリを続ける。


「この本…、七百円もするんだな」

まじまじと本の金額が記入されているところを見ている翔に宗太は明らかな不安を覚えた。

まさか…こいつ……。

「最近の文庫本は高いもんだな…」

ジッポのライターをズボンのポケットから取り出す翔に、クラスメイト達は息を飲んだ。

まさか…俺の本を燃やす気!?

宗太は本を奪い返そうとするが、あと一歩の処で本に火がついた。

「あぁ…俺の……」

奪いたい。今すぐに自分の少ないお小遣いで買った大切な本を取り戻したい。
だが、翔が怖くて手が伸びない。


本はどんどん灰になっていく。
無惨にも、燃えつきるスピードは早かった。
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