リビング
「熊傘、火ぃ消しとけ」

翔は燃え尽きそうな宗太の本を床に落とすとツカツカと教室を出ていったしまった。

翔の奴、きっと飽きたんだな。

敬は自分の扱いにぶつぶつ文句を言っているが、しっかりと火のついた本を踏み、消火していた。

宗太は大切な物を失った事が辛すぎて、呆然としている。
俺の大切な本が…せっかくお金貯めて買ったのに…!!!


無力な自分に涙すらも流れていた。
あの時、奪われた時にすぐ取り返していれば良かった。
だったら失わなくてすんだんだ。大切な物が灰になる事もなかったんだ!!!


「ま、がんばれや宗太。バイビー」

ギャハハと笑って行ってしまう敬など目もくれず、床に転がる焼け焦げた本を黙視していた。




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