リビング
変わりに前の席の生徒が言った。

「翔の…、あのいじめ…か」

語尾が弱々しかった。
二人共沈黙する。


「あれは酷いよな…。いくらなんでも酷い。」

博也は三週間前まではちゃんと学校に登校していた。
だが、翔からの悪質ないじめをきっかけにすっかり来なくなってしまった。


「見ろよ、まだ机が赤いぜ…」


机が若干赤く滲んでいる。
まるで絵の具でも塗った後のようだ。

「あれは酷かったな。朝きたら机が真っ赤だもん。博也、泣いてたよな…」


「他にも、上靴の中に毛虫とか、筆箱にミルワームとか、髪の毛ライターで焼かれたりしてたよな」

回りに響いている笑い声とは真逆に、二人の顔は暗かった。

「俺達、自分が同じ目に合うのが恐くて…あいつの事助けられなかった…よな」

博也の机を見つめながらまた沈黙が続き、二人の会話はそこで中断された。
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