ディテクティブ・ワンダー
親族からは祖父の気質を受け継いでいるからだと言われる。
穏和な祖父、緑郎が目に見えて不機嫌になる相手がいい加減な男と対したときだったという。
若い頃は、取引先相手に大立ち回りを演じたという伝説すら残す程であった。

だからこそ祖父は分かってくれていたのではなかったのか、と孝は戸惑った。
どうしてこの男の下で働けと言い残したのか、今の段階では何一つ理解できなかった。

東の寝顔を見ながら、孝は落ち着かない気持ちで溜め息をついた。

そして、また外を眺める。

――早く着かないかな。

不安と期待の中で孝は切望した。









それから間もなく、目的地、由基島へ着いた。

孝が揺さぶり起こすと東は眠い目を擦りながら、緩慢な動きで孝を見た。

「何?着いた」

「はい」

返事を聞いて大きな欠伸をする。

「了解。じゃ、降りるか。コバヤシくん」

訂正する気にもなれず、孝は東に続いてヘリを降りた。

「東くん」

不意にかけられた声に孝は自分の事のように反応した。
立っていたのは、品のよさそうな老人だった。

「先生。わざわざ迎えに来てくれたんですか?」

「なぁに、私もさっき着いたばかりだ」

駆け寄った東に老人ははにかみながら答えた。
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