遠くから来た男の子

森の中でのできごと

「じゃあ、出発だ」
と、ジャンが大声で叫ぶとみんなもそれに続きました。リズの家を出発したレムたちは、町の中心部を横切って、まずは、森の入口までやってきました。

森は夏だというのにヒンヤリとして肌寒いくらいです。
頭上ではカラスたちがギロリとこちらをにらんでいて、今にも飛びかかってきそうです。カルロがワンワンと吠えていかくします。

「いやー私、カラス苦手なの」
と、リズが身ぶるいします。

「この木の幹はゴツゴツしていて、人の顔がいくつもあるみたい」
と、レムが気味悪そうに言います。

「学校で習ったことはここでは役に立ちそうにもないな」
と、ジャンが独り言を言います。

レムたちは、丘まで続く草木のうっそうと茂った道を、こわごわ進みました。

しばらくすると急な坂道に出ました。
そこを登り切ると、今度はゆるやかな長い長い下り坂が続いていました。
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