遠くから来た男の子
実は、大人たちがこう言うのには理由がありました・・・
 
今から三十年近く前の、のどかな春の日のことでした。

新緑のそよ風が心地よくかけ抜ける中、
見知らぬ大男と小さな男の子が、どこからともなく、この丘の家にやってきました。
 
男の子は、まっすぐな瞳に、波打つ金髪の美しい、気品のある子供でした。

一方、大男は、りっぱな身なりこそしていましたが、背中は曲がり、広く突き出たおでこの下に人の心の奥底まで見通すような、小さなするどい目をしていました。


さて、その頃、町ではおそろしいことが起き始めていました。


子供たちが次々と姿を消していったのです。
町中に不安がひろがり、人々は用心し、扉という扉に重いカギをいくつもかけるようになりました。

それは大男と男の子が、その家に住みついてからしばらくたった頃の事でした。

< 3 / 58 >

この作品をシェア

pagetop