Crazy heart!
キーンコーンカーンコーン……
3時間目の授業の終了のチャイムが鳴り、俺はカバンに手をかけた。
「(帰るか…)」
廊下に出て、他のやつらの視線が俺に集まるのも無視して、中央を歩く。
「おや?橘くーん!!」
「………」
「橘くん!」
「!」
あ、橘って、俺か。
目の前に担任が立っていた。
「……………何?」
ニコニコと笑顔の担任は、俺の手のカバンに気付き、不思議そうな顔をした。
「あれ、帰っちゃうんですか?」
「悪いかよ」
「いや、そうじゃなくてですね、この前橘くんが休んでた日にプリントを渡そうと思いまして。橘くんを探してたんですよ。いやー見つかってよかった、見つからなかったら僕、どうしようかと…」
そういって、担任はプリントを一枚差し出した
「…ふーん」
「では、さようなら!気をつけて帰ってくださいね!」
あ、怒んねえんだ。
それどころか笑顔で送り出しやがった。
店長とこいつの違いってきっと、この担任の、無駄に素敵な笑顔だろうな。
担任がくれたプリントの内容は、進路のことについてだった。
希望の進路を記入し、提出するものだ。
「………」
これに書く内容は、すでに決まっている。
『就職希望、就職先はすでに決定済み』
就職先は、店長がうまい具合に偽装してくれるだろう。
俺は、一生ホストだ。