Crazy heart!


キーンコーンカーンコーン……

3時間目の授業の終了のチャイムが鳴り、俺はカバンに手をかけた。

「(帰るか…)」

廊下に出て、他のやつらの視線が俺に集まるのも無視して、中央を歩く。

「おや?橘くーん!!」

「………」

「橘くん!」

「!」

あ、橘って、俺か。
目の前に担任が立っていた。

「……………何?」

ニコニコと笑顔の担任は、俺の手のカバンに気付き、不思議そうな顔をした。

「あれ、帰っちゃうんですか?」

「悪いかよ」

「いや、そうじゃなくてですね、この前橘くんが休んでた日にプリントを渡そうと思いまして。橘くんを探してたんですよ。いやー見つかってよかった、見つからなかったら僕、どうしようかと…」

そういって、担任はプリントを一枚差し出した

「…ふーん」

「では、さようなら!気をつけて帰ってくださいね!」

あ、怒んねえんだ。
それどころか笑顔で送り出しやがった。

店長とこいつの違いってきっと、この担任の、無駄に素敵な笑顔だろうな。

担任がくれたプリントの内容は、進路のことについてだった。

希望の進路を記入し、提出するものだ。

「………」

これに書く内容は、すでに決まっている。

『就職希望、就職先はすでに決定済み』

就職先は、店長がうまい具合に偽装してくれるだろう。


俺は、一生ホストだ。


< 14 / 28 >

この作品をシェア

pagetop