Crazy heart!
俺達は、残りの20人が騒いでいる机と少し離れた、小さい机があるイスに腰掛けた。

「………で?なんでお前がここにいる」

「……………」

「…佐々木若葉だろ」

気付いた俺、相当すごい。

だってサキさんであるこいつは、メガネを外し、ポニーテールだった髪の毛は降ろされ軽く巻かれ。

化粧だって、あの時ぶつかったときみたく、目を重点的に塗って。

全くの、別人。

少なくとも10代には見えねえ。

「ちょっと、仕事中に本名出すなんて不謹慎じゃない。クレイジーくん」

なるほど、全ての謎が解けた。

こいつが俺の正体を知ったのは、例の夜にぶつかったときに気付いたからだろう。
こいつが今日早退した訳は、病院とかじゃなく、俺と一緒で、今日の合コンの準備の為だから。

「うるせーよ。何が『中学生のホストが気になる』だよ。テメーもじゃねえか。なんだ?サキって源氏名は、ササキの後ろ二文字からか?」

「あ、うん。…クレイジーは?」

「店長がつけた」

「そっか。ぴったりだね」

「うるせーよ。もう一度聞くけど、なんでお前ここにいるんだ?」

「お金目的」

「……………」

こういう奴なのか。
メガネのくせに。あ、今はメガネじゃねーや

「クレイジーくんは?」

「…別に目的なんてない」

「?」

「店長に、やらされてるだけ」

「そうなんだ」

「……落ち着いてるんだな」

「ん?」

「学校じゃ、あんなにはしゃいでるのに」

「一日中あのテンションでいたら疲れちゃうよ」

「じゃあ、今のお前が、素のお前なのか?」

聞くと、サキこと佐々木は、じっと俺を見つめて

「………………どっちも、違うよ?」

とだけ言った。

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