生きる意味
「僕には、感謝すべき親は居ない。ずっと一人だったから、友達も居ない。別に世界なんか考えてない。日本も好きじゃないしね。自分なんて…」


柚は、指で十字架をなぞった。


「疾うの昔に捨てた」


微かに、声が震えていた気がした。


「だから、僕が生きるのに意味は無いんだよ。僕が死んでも、誰も、損をしない。誰も、悲しまないんだ」


柚は目をこすってから顔を上げ、頭上を飛び交う鳥を見つめた。
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