キミと僕の記憶
忘却
夕食のテーブルで、まだ帰らないパパを待たず私は箸を持った。
お腹がペコペコに空いていた。
「で…プールに落ちたって、大丈夫だったの?」
私の目の前に味噌汁を置きながらママが口を開く。
私はコロッケを頬ばりながら、首だけを縦に振った。
「ならいいけど。水飲んだりしたんじゃないの?
美月泳げないんだから」
コロッケを飲み下しながらまた頷く。
「――水ね、結構飲んだかも。
殆ど溺れてたから」
ケロッと答えたらママは逆に深刻な顔をして箸を置いた。
「じゃあ部員の人に助けて貰ったの?
紗絵子ちゃんに?
だから、あんた泳げないのに水泳部なんて辞めなさいよ。
迷惑じゃない」
う、と私は固まり黙って味噌汁をすすった。
「今日は、部員は居なかったの!
たまたまジャージを貸してくれた同級生が助けてくれたから、部には迷惑かけてないじゃん」
説得したつもりが、ママの眉はますますつり上がった。
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