キミと僕の記憶


すると呆れた、というようにママは眉を上げた。


「覚えてないの!?
5歳の記憶って普通あるでしょお〜。
ホラ、夏に従兄弟のまぁ君達と川にバーベキューしに行った時よ!
美月ったら深みに入って流されて……
川下にいたボーイスカウトの子!
あんたと同い年の子だったのよ?
その子も流されながら必死で助けてくれたんだから!」


その時の情景が浮かんでいるのか、ママは興奮してテーブルを叩いた。




スミマセン
全然覚えてないんですけど……

バーベキュー?
に行ったっけ?


それよりもっと前の記憶はあるのに
その出来事は全く知らない。
すっかり忘却の彼方だ。



「――それってもしかして、溺れて私の意識がなかったんじゃない?」

ふと思いついて詰め寄ると、ママはあっさり頷いた。


「そーよ意識不明。
救急車が来る頃には戻ったけど、その男の子だってフラフラで2人して病院に担ぎ込まれたんだから!」


さっきから妙に自慢げなママは置いといて……

無くした記憶を思い出そうとしてみる。



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