キミと僕の記憶
♪プルル〜
リビングに電話の呼び出し音が鳴り響いて、私はハッとした。
走って来たママが受話器を取り上げたのを横目に、部屋へ戻ろうと階段に向かった。
その私を廊下へ顔を出したママが呼び止めた。
「美月に電話よ!
水泳部の部長さんだって」
ママの言葉に私はギョッと振り返った。
水泳部の部長!?
麻木センパイ!?
何で?
どうしてセンパイが!
躊躇しているとママが強引に子機を渡してくる。
ご丁寧に保留を通話にして!
「――もしもし?」
手のひら子機からはセンパイの声が聞こえてくる。
私はゴクリと喉を鳴らしてから、恐る恐る耳に近づけた。
「――はい、藤井です……」
「藤井?ごめん家に電話したりして……
今大丈夫?」
初めて聞く電話の向こうのセンパイの声。
何だか知らない人と話している錯覚がする。
「ハイ、大丈夫です。
どうしたんですか?」
センパイはため息をついたようだった。
.