攻防戦‐KisS
消毒液の量もそれに比例してしまったようで、口の周りがオレンジ色になった。

素人に介抱任せんなよ、先生。

とりあえず、保険の先生に責任転嫁しておく。


「…俺が悪かった」


ぽつりとつぶやく透。

絆創膏でこのオレンジ隠せるかな…。


「陽乃…」


透がめったに呼ばない私の名前を呼ぶ。

その真剣な表情に、顔が近かったことを思い出した。


「あ!先生に包帯もらってくるね」

「口元なんで包帯はやめて」


言って、私をベッドに押し倒す。

抵抗はしたが、その腕は動かすことができなかった。

こいつと殴り合わない方がいいな。
身を思い知った。
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