いなほす
新しい仕事
毎朝、決まって夜中の1時に目覚ましが鳴る。眠い目を擦りながら布団から出る。最近は起きるのも面倒だ。外はまだ冬で寒い。厚着をしてバイクにまたがりエンジンをかけ出発する。
「寒いな。」
独り言も決まっている。店に着くとすぐに新聞を運び数を数えて準備する。自分が配る場所は自分で用意する。
「田中、昨日も不着の連絡が来たぞ。次、不着したら社員からバイトにするからな。」
朝から先輩から脅された。正直、今の仕事はやりたくない。けど、今は不景気で仕事もない。新聞配達はお金もいいしやるしかない状態だ。
「配達に行ってきます。」
やっと、うるさい場所から出れた。配達にでたら一人の世界。自分のペースで出来るから気が楽だ。
「そうだ、不着には気をつけないと。バイトにされたら暮らしていけないからな。」
そう、思ってもやる気がない田中は深く考えない。もし、不着したら仕方がない。考えも軽かった。配達は1時間で終わる量。暇な時間がたくさんある。だから、コンビニに行き立ち読みを始める。読んでる本は求人雑誌。仕事を変えるため毎週見ている。けど、仕事はなく読むだけ。
「やっぱ、不景気だから仕事ないな。車の免許もないし近場になるからな。早く規則正しい仕事したいな。」
やり甲斐がある仕事に就きたいけどある訳がない。あるのは苦手な営業やサービス業だけだ。昔から人付き合いが苦手でいつも長続きしない。
「もう、こんな時間か。戻るか。」
読んでいた雑誌を戻した。またあそこに戻ると思うとため息しかでない。
帰ろうとドアに近づいた時なぜかある雑誌が気になった。普段は全然気にならなかったのにこの日は気になって仕方がない。時間を忘れある雑誌を手に取りペラペラとめくり始めた。
「夜の仕事?」
この求人雑誌は夜の仕事がたくさん載っていた。例えばホステスのボーイや呼び込みの人などの募集が載っていた。
「ホスト募集?」
田中の目に止まった記事はホスト募集の会社だった。経験はないが初心者も大丈夫と書かれている。お酒が好きな田中には好都合だ。
「もしもし、気分が悪いのでお店に帰らずそのまま帰ります。」
田中の気持ちは決まっていた。合格、不合格は考えないでとりあえず面接をうけることにした。すぐに家に帰るなり募集の記事をガン見した。
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