赤い半纏

「いいですよ。ほら、入ってください」

私は唐傘をがんばって上に持ち上げる。腕をのばしきってやっと、二人とも傘に包まれる。
赤い半纏の男は傘を持つ私の手を、握り締める。

その時わかったけど、すごく冷たい。冷え性の人だってこんなにならない。
肌もよく見ると真っ白だし、まったく血の気がないというか・・・・。

「私が持ちますよ。どうもありがとうございます」

「あ、どうもありがとうございます」

そう言い合ってまた、同じ真っ直ぐな道を歩いていく。

赤い半纏の裾がひらひらして、歩くたびに私の肩にあたる。
歩調はとてもゆっくり、打ち合わせでもしたかのようにぴったり歩くので、傘からはみださないで歩ける。
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