赤い半纏
「一応名乗りましょう。徳大寺千子。とくさん、とでも呼んでください」
「では、ちこちゃんと呼ばせてもらいます。私の名前は木霊といいます。こだまさんと呼んでいただければとてもうれしいのですが」
「じゃ、こーちゃんと呼びます。またどこかで会えたらいいですね」
「そうですね。また後ほど」
そして呆気なく二人とも別れた。
降っていたしぐれは、だんだんやんできた。
頭の上にのったハンカチが、ほんのり暖かい。
私の顔が上気してるの?まさかねぇ・・・・。
何気ない日常の中に入り込んだ、赤い一線のようだった。