Lie & Truth ―君色番外編―
留美が目を覚ましたのはそれから数時間後の事。
「……あれ?ここ…」
「目覚めた?」
キョロキョロと落ち着かない様子であたりを見回す仕草が、まるでもらわれてきた子猫が初めて引き取り手の家に来た時のそれのようで噴出しそうになる。
「頭イタイ…」
「飲みすぎだっつの。酒弱ぇクセに」
彼女はやっと、自分がどうしてここにいるのか思い出したらしく、恥ずかしそうに顔を赤く染めて俯いた。
「ごめんね…こんな時間まで」
「大丈夫。ウチ親いつも帰ってくんの遅いから。お前んとこの方が大丈夫かよ?もう10時だけど…」
「うちも、共働きで親帰ってくるのいつも遅いの」
「ふーん。そうなんだ」
「でもね、まだ帰りたくない…」
「え?」
家で何か嫌な事でもあったんだろうか?
もしかして彼氏の事反対されて親と喧嘩したとか?
何の根拠もない勝手な妄想が俺の頭の中を駆け巡った。
「帰りたくないってどーすんの。家出少女」
「いっ…家出じゃないもん!」
「“翔”となんか関係あんの?」
「え……?」
あ…。
コレはまずかったか?
何で知ってんの?って顔でこっちを見る留美。
押し黙り、俯きながら
「もう、忘れなきゃいけない人なんだけどね…」
と消えそうな声で呟いた。