Lie & Truth ―君色番外編―

「…昨日一緒にいたのは弟だよ」

「お…弟?」

「そう、弟。ウチの弟身体弱くて…両親が忙しいからあたしが病院に連れていってあげたの」

「そう…だったんだ…」



人を見る目があるかどうかと聞かれると自信はないが、不機嫌な留美の言葉はとても嘘をついているようには見えなかった。


いや、信じたかったのかもしれない。


留美の…
俺への気持ちを…。






「お前そんなん信じたの?どんだけ騙されやすいんだよ」


次の日学校で、“お前が見た男は弟だったらしい”という事をケイタに話したら鼻で笑われてしまった。


ケイタの言葉に少しカチンとくる。



「何で嘘だってわかんだよ?」

「だってそんな感じじゃなかったもん。弟と腕組んで歩くか?普通。だとしたら相当痛い兄弟だな」

「……………」


俺には兄弟がいないから、そういう気持ちは全く分からない。

だけど、弟や妹が居たらきっとカワイイと思うし

腕組んで歩くくらいはするかもしれない…いや、しないか?


確かにそれはちょっとやりすぎな感じもするけど

でも留美が弟だって言うなら弟だって信じなきゃどうしようもないじゃん…。


証拠もないのに

嘘だろ!なんて言えねーし…。



ケイタの一言に翻弄されている自分が情けなかった。

信じると決めたのなら何を言われようがドシッと構えていればいいだけの話なのに、人の意見に左右されて、あまつさえもしかしたら…なんて最悪な事態を想定する。


俺はいつからこんな弱い人間になった?


この胸の痛みを

不安を

どうやったら取り除ける?


生憎まともな恋愛をしてこなかった俺には

わかんねぇよ…。


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