Lie & Truth ―君色番外編―
そして結局、心にわだかまりを残したまま、この事件は迷宮入りを果たした。


言いたい事も、聞きたい事も、本当はもっといっぱいあった。


しかし…惚れたモンが負け、とは良く言ったものだ。

恋愛は人をバカにさせる。


“嫌われたくない”


そんな気持ちが先立って、本人を目の前にすると何も言えなくなってしまう―――…。



ほんと…

笑っちゃうよ。






季節はやがて、暑い夏を過ぎ、受験への意識が高まる秋へと移行していった。


留美の進路を知らなかった俺はそれとなく

「そーいえば進路どうすんの?」

と聞いてみる。


俺は高校なんて入れれば何処でもいいが、出来れば留美の通う高校も近くであって欲しい。


しかし彼女から返ってきた答えは、予想もしないものだった。


「あたし、高校行かないよ?」

「え、何で!?」

「働くの。弟の入院費用とか稼がなきゃいけないから」


久しぶりに出た弟の話題。

病気がちだとは聞いていたがまさかそこまで悪くなっていたとは…。


「入院か…それっていくらくらいかかるの?」

「さぁ…下手したら一生働くようかもね」


留美は寂しそうに笑った。


一体どんな思いで家族を助けるために自分が犠牲になって働く事を決めたんだろう…


毎日何の問題もなく脳天気に生きている俺を、留美はどう思っているのか…。



そう考えると

急に怖くなった。



このままじゃ

留美に愛想尽かされるんじゃないかって…。


同じレールの上とまでは行かなくても

せめて…近くまでいけるように

ほんの少しでも力になれるように


俺は変わりたい。


そう思った。

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