Lie & Truth ―君色番外編―
“翔”
直感的にそいつだと思ったのは…
あの日、夢の中で辛そうにその名を呼んでいた彼女の姿が
酷く印象的だったからだと思う。
ずっとずっと、心の奥で引っかかっていたんだ…。
「ねぇ、翔って名前に聞き覚えある…?」
本当は元彼の事なんか聞きたくなかったけれど
俺は目を反らさずに確かめなければいけない。
いつも何処かに影を潜めていた、実体の無いそいつの存在を
とうとう暴かなければいけない時がやって来たのだ。
「あぁ、君も翔くんの事知ってるの?」
ドキッ…。
俺の心拍数はいっきに急上昇し、変な汗が頬を流れる。
とうとう…
この瞬間がやってきた…
「可愛いよねぇ~。留美の弟!あたしもあんな弟欲しかったなぁ~」
……………え?
え!?
お、弟…?
「はは、翔って弟なんだ…?」
同名って事は…
いや、無いだろ……。
だとしたら…
まさか…
「あれ、もしかしてモト彼とかだと思ってた?わかるわかる、あの二人仲いいもんねぇー。でも本当に姉弟だよ!翔くんとウチの妹、同じ学校に通ってたんだ。」
ある意味極限状態にあった緊張感から解放され
身体中から力がぬけていくのを感じたが
そこにはきっと
失望感も大量に混ざっていたに違いない。
笑うしかなかった。