Lie & Truth ―君色番外編―

「はいっ!石垣留美!うたいまぁ~~~す!」

「歌わなくていいから!!」


公園で飲み始めてから1時間くらいが経った頃には、留美は顔を真っ赤にしながら出来上がっていた。


数にして5本の500ミリの缶ビールを平らげていて

空いた缶は無造作に地面に転がっている。



酒、強いって訳じゃなかったんだ…。


俺は呆れた。

強くもない酒をこんなに大量に買い込んでバカ飲みするなんて

まるでヤケ酒――――…。



え?




俺は留美に目をやる。



彼女は楽しそうに踊っていた。



「ねぇ…何か嫌な事でもあったの?」



踊っていた足をピタリと止めて、留美はこっちを真顔で振り返る。


「どうして?」


「…な、なんとなく?」


それ以上聞くな、と言いたそうな表情だったので、俺はそれ以上その話題を振れなかった。


人間だれしも、触れて欲しくない心の痛みの一つや二つはあるだろう。


とりあえずただの能天気女ではないという事だけは分かったので、それだけでもよしとしよう。


そう思った。






「あぁ~~もう!何処なんだよお前の家はぁ!!」

「んふふぅ~!アメリカァー」


一人で歩く事すら出来なくなった留美を背中に負ぶって、俺は公園の近くを行ったりきたりしていた。

というか、コイツの道案内どおりに歩いていたらそうなった、が正解だ。


いい加減イライラして問いただすとフザけた答えを返してくる。


実に面倒くさい女だ。


捨てて帰ろうかな。


と思ったが、まさかそんな事は実際出来るわけがない。



しかしこのままでは拉致があかないと思ったので、俺は留美を自分の家へ運んだのだった。

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