いばら姫
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そしていよいよ迎えた文化祭当日。

普段では見られないような賑わいを見せている中、校内の一角で何やら人だかりが出来ていた。


「きゃー!京平くーん!」

「すごーい!本物ー!!」

奇声ともとれるほどの黄色い声の発信源は、外部からやってきた京平のファン達。

また見た目に反して断れない性格と律儀な素質が災いして、京平は朝っぱらからずっとこんな感じで女の子に囲まれては写真を撮られているのだ。


今思えば茨は恰好の魔よけだった。


最近よく二人でいるようになってから、すれ違うだけで奇声を発せられたり、いつの間にか私物がなくなっていたり、こそこそと私生活を嗅ぎ回わられたりする事が無くなった。


まぁ堂々と付き纏われる事には正直うんざりする節はあったけれど

それでもコソコソされるよりはずっとマシだ。


こんなときあいつがいれば、きっと追っ払ってくれるんだろうなぁ…。


ピンチの時に現れる救世主を待つヒロインのように、誰かが助けてくれるのを待つしかできないでいる京平。

しかし頼みの綱である茨は今、店番をしているので教室を離れられない。


あぁー誰か助けてぇー!


思わず声にだしてそう泣き叫んでしまいそうになった、

その時。

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