いばら姫

「京平ー!」


何も考えていなさそうな脳天気面でこっちに手を振りながら向かって来たのは…

「あっ!あれハル君じゃない!?」

「ほんとだー!顔だけはいい人だー!」


ファン達は正直だった。


「君たちぃ、顔だけとは失礼だなぁ。今日の俺のステージングを見たら間違いなく惚れるぜ!」


それは心外だといいたげに反り返る程ビシッと人差し指を女の子達に向け、ニヒルな笑みを浮かべるハル。

本人は京平のファンを自分のファンにする勢いでカッコよく決めたつもりだったのだろうが


「へ…変な人ぉ…」

「きもーい…」


どうやら逆効果だったようだ。


鳥肌が立った腕をこすりながら彼女達は後ずさり、いこいこ…と逃げるようにしてその場を去って行った。


あんな事言われたら俺が女でも引くわ…。


助けてもらった手前、思ってもそんな事は口に出せないが、ここぞと言うときにはイマイチカッコがつかないハルを不憫に思う一方で、京平は助かった…と安堵のため息を吐いた。



「ありがとうハル!助かったよ!」

「……………」


先程のショックが思った以上にでかかったのかハルは恨めしそうに無言でこっちを睨んでいる。


今は京平の言葉が全部嫌みにしか聞こえないようだ。


「な、なんだよ」

「はぁー…おまえはいいよなぁ…存在してるだけで女の子達から愛されてさぁー」

「……おまえの場合性格に難がありすぎなんだよ」


見た目で言えば恵まれていると言えるのにも関わらず、彼女いない歴=年齢。という恋愛遍歴はハルのプライドを傷つける凶器でしかなく、最近では前にも増して焦っているようだった。

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